カギ屋さん②


おじさんは一見すると公務員に見えなくも無い。しばらく眺めながら僕は、昨日家を出たことを悔やんでいた。家を出た理由なんてもうどうでも良かった。




ソファーがある部屋から、おじさんがいるカウンターが見える。カウンターの後ろのドアから30歳前後の男(無職?手伝い?息子?)が何回も出入りしていたので顔を覚えた。
人の出入りが落ち着いてきたから、おじさんに声をかけようと近づいていった。するとさっきの兄さんと目が合って「よう」って言われた。自分には何に使うのか分からない商品の片づけをしていた。流れで手伝うことになった。
兄さんの質問攻め
「お前昨日来たんだな」「普段何やってんだ?」「学生?社会人じゃないよな」「就職は?」

「内定もらいました」
「お前みたいなやつでも内定もらえるんだな」
「初めて会ったのに何がわかるんですか」
「いや。何かハキハキしてないし・・・基本やる気無いだろ?ってか何が出来るの?」
「これから少しづつ覚えるんですよ!僕だって何とかやれますよ!」
兄さんと仲良くなった。
おじさんは近くにいて、こっちの話を聞いてるような、聞こえてないような、今度は事務のような仕事をしてる。客とは違う相手と、真剣なのか、形だけなのか、話してる。やっぱり雇われ公務員のような気がする。


カウンターの後ろから外に出ると、すぐ近くに兄さんのお店があった。売店の様。そこには大人のもの、子供のもの、食べ物、人気のなさそうなお菓子、昔ながらの瓶詰めのジュース、ガラクタ、その他有り得ない物がいっぱいあった。
何を話したっけか。此処でも酷く突っ込まれた。彼女はいるか?とかどんな友達がいるんだ?とか、根掘り葉掘り。

話してる時に、遠くに朝、目が合った女子高生がいることに気づいた。しばらく目が合って、どっか行っちゃった。
何しにきたんだろ?ここの子か?気になる。


「兄さんこんなんじゃ売れないでしょ?」
「いや。端っこの大人のもんが売れんだよ」
ああ。子供には見せられない。奥に仕舞いなよ。